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Pachypodium namaquanum

光堂

Pachypodium namaquanum 光堂

パキポディウム属の至宝、“光堂”ことパキポディウム・ナマクアナム

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キポディウム属の至宝、“パキポディウム・ナマクアナム”です。


南アフリカ - 北ケープ州のステインコフ(Steinkopf)からリフタスフェルト国立公園、ナミビアのロッシュ・ピナー(Rosh Pinah)にかけてが原産です。
標高300-900mの範囲の、岩や石の多い丘陵の斜面に自生しています。

種小名の 'namaquanum' は、その昔自生している地域一帯が 'Namaqualand'(ナマカランド)と呼ばれていたことに由来しています。
日本には戦前からごく少量の個体が移入されていたらしく、その当時から現在に至るまで“光堂”という和名で呼ばれています。

パキポディウム属はマダガスカルにそのほとんどの種が自生していますが、本種はアフリカ大陸に自生する大型のパキポディウムの一種です。
一般的には高さ1.5mから2mほどの大きさに成長しますが、中には4m、5mの高さにまで育った古株もあるそうです。

太く長いボトルのような円柱状の幹を持っており、幹は柱状に上に伸びながら成長します。
大株になるほど太い幹は株元の方が太くなり、上部が細くなる先細りの樹形となっていきます。
なおパキポディウムの仲間は成長する幹や枝が分枝する種が多いのですが、ナマクアナムはほとんど分枝せず単幹のまま成長します。

全身にびっしり生えた細く長いトゲが大きな特徴で、そのトゲはわずかに下方向に向かって生えてきます。
成長に伴い、トゲは成長点に近い上部の方ほど密度が濃く、株元周辺になるにつれ徐々に少なくなっていきます。

幹の先端からはパキポディウム・ナマクアナムならではの美しい葉を展開します。
淡いエメラルドグリーンをした葉はウネウネとフチが大きく波打ったフリルのような形状をしています。
葉の表面にはうっすらと微毛が生えており、ビロードのような滑らかな手触りをしています。

ユニークな樹形やトゲ、葉っぱだけでも十分魅力のあるナマクアナムですが、素晴らしい花も咲かせます。
筒状になったトランペットのような花は、レモンイエローをしており、先端が濃い赤に染まります。その花が先端付近に鈴なりに咲く様子は、惚れ惚れとする美しさです。
残念ながら、ナマクアナムはある程度大きく育たないと開花はしません。

なお、本種はパキポディウム属の中でも栽培困難な難物として知られています。
今まで育ててきた所感としては、とにかく根が弱く、そこから腐りが入りやすい印象があります。
また、日光を好む割に成長点が焼けて潰れることが多いという、厄介な性質があるように感じます。
そのため、一般的に性質が丈夫な 'Pachypodium lamerei'(パキポディウム・ラメレイ)などに接木して育てられていることが多くあります。


ちなみにパキポディウム・ナマクアナムは自生地では 'Halfmens'(半人間) と呼ばれており、“半分人間、半分植物”という意味があるようです。
パキポディウム・ナマクアナムの面白い特徴として、自生地に生えている大きな株は細くなった幹の先端が全て北に向かってやや垂れています。
このような特徴はチリに自生するサボテン、'Copiapo cinerea'(黒王丸)にも見られるようですね。
磁気の関係や成長期の太陽の向きなど諸説はあるようですが、いまいちその原因ははっきりと解明されていないとか。

現地の人(サン族)はその様子を、頭を少し垂れて斜面を登っている人間に見えたことから 'Halfmens' と呼ばれるようになった、といいます。
また代々この地に住んでいるサン族(ナマ人)の間では、パキポディウム・ナマクアナムにまつわる以下のような伝説があるそうです。

その昔、民族紛争によって故郷を追われ、南へと逃げた人々が祖国(北ナマクアランド)に思いを馳せ悲しみにくれていた。
それを哀れんだ神が彼らを 'Halfmens'、パキポディウム・ナマクアナムの姿に変えた。
そのため、パキポディウム・ナマクアナムは山の斜面で北(故郷)に向けて頭を下げ、悲しみに暮れている。。。

以上のような伝説のためか、サン族の間ではパキポディウム・ナマクアナムは神聖な存在として扱われているようです。


【科・属】

Apocynaceae Pachypodium
キョウチクトウ科パキポディウム属

【原産地】

南アフリカ - 北ケープ州ステインコフ(Steinkopf)からリフタスフェルト国立公園にかけて
ナミビア - ロッシュ・ピナー(Rosh Pinah)一帯

【置き場所】

年間を通して日光のよくあたる場所で管理します。
パキポディウムの仲間を栽培する上で日光はとても重要です。
パキポディウム・ナマクアナムは日光が不足すると幹が徒長し、トゲの密度がまばらになってきます。
また日光不足の状態で長時間栽培すると根腐れ、株の腐敗、害虫の発生を誘発します。

ただし根がよく張っていない活着前の株や、環境が急変した直後の株などを長時間強い日光に当てると成長点が蒸れて腐ることがあります。
これは本種の成長点が非常に長いトゲで密集している為と思われます。
完全に活着し、旺盛に成長するまでは日照時間を調節したり、寒冷紗などを用いて日光を適度に調整してください。

パキポディウム・ナマクアナムは涼しい季節に成長する冬型種とされる場合もあり、蒸し暑さには若干弱いところがあります。
硬く締まった株に育てるためにも日当たりや風通しには特に注意しましょう。

【水やり】

パキポディウム・ナマクアナムは一般的には寒い季節に成長し、夏は休眠する冬型種といわれています。
春先に葉を落とし始め、夏から初夏にかけて葉を全て落とし、休眠に入ります。
休眠中に水やりすると簡単に腐ってしまうので、休眠中は断水しましょう。
ただし休眠に入る時期もその年ごとによって若干異なるので、株の状態を見ながら調整します。

短い休眠期間を経て、暑さも本格的になったころに葉を出し始めますが、この時期にあまりたくさん水やりすると腐ってしまうことがあるので、夏の水やりは涼しい夜間に行うようにすると良いかもしません。

涼しくなり、葉も勢いよく繁りだしてからは土が乾いてから水やりします。
極端な寒さに当てない限り、冬でも葉を繁らせたまま越冬しますが、あまり寒い時期にたくさん水やりすると凍害を受けることもあるので、寒い時期に水やりする場合は天気の良い午前中にひかえめに水やりするようにします。

【肥料】

成長期の秋に薄めた液肥を与えます。
用土によく醗酵した有機質肥料や、緩効性の化成肥料をごく少量混ぜ込んでおいても良いと思います。

【適温】

寒さ弱いパキポディウムが多い中で、パキポディウム・ナマクアナムは比較的低温に耐えることができます。
寒さよりも夏の蒸し暑さに気をつけましょう。
冬も極端な寒さに当てない限り葉を繁らせたまま越冬します。冬に葉が枯れ始めた場合は気温が低すぎる場合があるので注意しましょう。