Pachypodium lealii
パキポディウム・レアリー
寸胴な樹形が魅力の孤高の希少種、パキポディウム・レアリー
ナミビア北西部、アンゴラ南部にかけてに広がる 'Etendeka'(エテンデカ)と呼ばれる玄武岩大地が原産です。
低い岩山の山腹や、非常に乾燥した不毛な平原の岩場などに自生しています。
種小名の 'lealii' は、アフリカ大陸南部の地質学・植物学にも長けたポルトガルの軍人、フェルナンド・ダ・コスタ・レアル大佐(Fernando da Costa Leal)の名をとって命名されました。
アフリカ大陸に自生する5種のパキポディウムのうち、もっとも北部に自生している大型のパキポディウムです。
パキポディウム属と言えばその多くの種がマダガスカルが原産で、他にはアフリカ大陸南端部とナマクアランドに数種が知られていますが、飛び地のように離れたアンゴラには本種が孤立するように自生しています。
生育している環境によって大きさ(高さ)は大分異なるようですが、小さな株で高さ2m、大きな株になると高さ6mにまで達することもあります。
英名で 'Bottle Tree'(ボトルツリー)と呼ばれることもあるようですが、その名のとおり、ワインボトルを太くしたような寸胴の樹形が特徴です。
株元はドシンと構えた太さを誇っていますが、先端に向かうにつれ急激に細くなる面白い樹形が魅力です。
基本的に主幹は分岐せずに上に向かって伸びますが、長い年月を経た古木になると先端付近でようやく分岐が始まります。
幹の表皮は飴色のような、赤味がかった光沢のある茶色をしており、ツルッとしたなめらかな質感です。
パキポディウム・レアリーのもうひとつの大きな特徴として、長いトゲが挙げられます。
その太い胴体には見合わないような非常に細く鋭い、長いトゲを主幹の先端付近から無数出します。
幹の先端からは槍先状から逆卵形をした、明るい緑色の葉を展開します。
葉の表面は非常に細かな微毛に覆われていますが、小さい株のうちはなかなかその特徴は表れません。
休眠から目覚め、葉を展開し始める前に白い花を咲かせます。
花はある程度の大きさに育たないと咲きませんが、成熟した株になると成人男性の掌ほどもある大きさの花を咲かせることもあるようです。
なおパキポディウム・レアリーは、産地によって若干樹形が異なり、細長く伸びるタイプや、球状にぶっくり太るタイプなどが存在するようです。
成長は非常に遅く、栽培環境下で大きな株を見ることはまれです。
早く成長させようと多肥、多水栽培すると主幹が細長く伸びてトゲの間隔がだらしなく伸びてしまったり、肥料負けや根腐れを起こして枯れやすくなります。
そのため、パキポディウム・レアリーは他のパキポよりも硬作りすることをお勧めします。
以前はパキポディウム・レアリーの変種・亜種として、'Pachypodium saundersii'(パキポディウム・サウンデルシー:白馬城)が知られていましたが、主な自生地が1,000km遠く離れていること、樹形や葉の形状から、現在は完全な別種として再分類されています。
またパキポディウム・レアリーは、日本で栽培するうえでは気難しところがあり、長期間栽培するのは難しい難物種でもあります。
私見ですが、パキポディウム属の中でも 'Pachypodium namaquanum'(パキポディウム・ナマクアナム:光堂)と同等程度に栽培が難しい種だと思います。
そのため、丈夫な 'Pachypodium lamerei'(パキポディウム・ラメレイ)などに接がれて栽培されることもあります。
それでもその孤高な株姿、希少性に魅せられて多くのパキポファンの垂涎の的にもなる魅力的な種ですので、是非栽培にチャレンジしてみてください。
【科・属】
Apocynaceae Pachypodium
キョウチクトウ科パキポディウム属
【原産地】
ナミビア北西部、アンゴラ南部
【置き場所】
一年を通して直射日光のよくあたる場所で管理します。
パキポディウムの仲間を栽培する上で日光はとても重要です。
特にパキポディウム・レアリーは特に日光を好み、日光が不足すると縦に伸びやすくなります。
日光が不足すると幹や枝が徒長しやすくなり、日光不足の状態で長時間栽培すると根腐れを起こしたり、株の内部から腐敗しやすくなります。
特にパキポディウム・レアリーは寒さに非常に弱いので、冬場でも日光のよく当たる場所で管理し、寒さに当てないようにしましょう。
また、風通しの悪い場所ではカイガラムシが発生しやすくなります。
硬く締まった株に育てるためにも日当たりや風通しには特に注意しましょう。
【水やり】
成長期の夏は土が乾いたらたっぷりと水やりします。
気温の高い成長期は雨ざらしでも株自体は問題ありませんが、縦に伸びやすくなります。
そのため、なるべく丸い形を維持するためにも、成長期も水やりは辛めにしたほうが丸い樹形と育ちやすくなります。
ただし、その分成長速度は非常に遅くなります。
秋に入り涼しくなってきたら徐々に水やりの回数と量を減らし、葉が落ち始めた頃から春までは断水して管理します。
ただし、休眠中の冬もある程度の温度や日光が確保できる環境の場合、月に数度ごく少量の水やりで細根の枯死を防ぐと翌春以降の立ち上がりが良くなります。
冬に水を与える場合は、暖かく天気の良い好天が続く日を狙い、午前中に用土をほんの少しだけ湿らす程度水やりし、気温が下がる夜にはほぼ乾いている程度にしましょう。
春になると葉や花芽が徐々に展開し始めますが、いきなり沢山水やりせず、少しづつ水やりの回数と量を増やしていきます。
梅雨が明けるまでは、土が完全に乾いて数日おいてから天気の良い日に水やりするようにします。
【肥料】
成長期の夏に微量元素が不足しない程度に薄めた液肥を与えます。
用土によく醗酵した有機質肥料や、マグァンプKなどの緩効性肥料をごく少量混ぜ込んでおいても良いと思います。
【適温】
パキポディウム・レアリーは寒さに弱いので、冬は暖かいところで管理します。
葉を落とした後の休眠期も、表皮の下の葉緑素で光合成を行って寒さに対する体力を静かにつけています。
休眠中もなるべく日光にあて、日中に鉢内と植物自体の温度を上げると耐寒性も増します。