Haemanthus nortieri
ハエマンサス・ノルティエリ
強烈な個性を持ったヒガンバナ科の希少球根植物、ハエマンサス・ノルティエリ
南アフリカ - 西ケープ州クランウィリアム(Clanwilliam)北方のナードウスベルグ(Nardousberge≒Nardouws Mountain)のみが唯一の原産地です。
砂岩で形成された岩場の砂地に自生していますが、一帯は窪地で雨季には一時的に水没することもあるようです。
種小名の 'nortieri' は、南アフリカの植物学者、ピーター・ル・フラウ・ノルティエ博士(Dr. Pieter le Fras Nortier)の名をとって命名されました。
数あるハエマンサス属の中で最も奇妙で希少な大型の球根植物です。
球根の形状は球状から下膨れの長球状で、最大で直径6-7cmほどの大きさに成長します。
涼しい季節になると地中の球根から大きな葉を一枚だけ地表に伸ばします。
革質の厚みのある葉は濃いダークグリーンで、葉の根元は赤黒く染まったような色をしています。
葉は船のパドルのような、大きなシャモジのような形状で、地中からまっすぐに直立し、幅7-12cm、高さ20-25cmほどの大きさに成長します。
なお、球根が分球した株は葉が複数枚展開しているように見えますが、葉は一つの球根につき一枚のみしか展開しません。
地中から平で大きな葉が一枚だけ直立した様子は、近代美術のオブジェのような面白さがあります。
ハエマンサス・ノルティエリは葉の表面に粘着質の物質を出すという特徴を持っています。
この物質は自生地で雨が降ったり、株が水に浸かったりすると洗い流されますが、雨量が少なかったり、日照りが続いて乾燥してくると分泌し始めます。
ネバネバとした物質には砂やホコリがまとわりつき、やがて葉全体をうっすらと覆います。
これは、乾燥した時期や季節に砂やホコリを纏うことで、強い日光から葉を守ったり、葉から水分の蒸散を抑えるための自衛手段として考えれています。
とてもユニークな面白い特徴ですね。
充実した大株になると、葉を展開し始める前に太い花茎を伸ばし、大きなカップ状の花を咲かせます。
濃い朱色から赤い色をした花は花茎も同じ色に染まるために非常に目立ち、ユニークな葉にも負けないインパクトを持っています。
しかしながら、開花するまでには非常に長い年月が必要で、20年育ててようやく開花した、という情報もあるほどです。
球根自体の成長も非常に緩慢で、なかなか大きく育ちません。
なお球根が育ちきると分球し群生することもありますが、そうなるまでには数十年単位の非常に長い年月が必要です。
葉だけでも十分面白い特徴を持った種ですが、いつかは美しい花を咲かせてみたいものです。
【科・属】
Amaryllidaceae Haemanthus
ヒガンバナ科ハエマンサス属
【原産地】
南アフリカ - 西ケープ州ナードウスベルグ(Nardousberge≒Nardouws Mountain)
【置き場所】
成長期に入り葉が展開し始めてから休眠に入るまで、日光のよく当たる明るい場所で管理します。
ハエマンサス・ノルティエリは日光・通風の良い場所で管理すると、葉幅が広く、がっしりと締まった株に育ちます。
日光が不足すると葉が徒長し、締まりのない葉姿になったり、球根の腐敗を誘発します。
また、風通しの悪い場所も同様です。
冬型種であるハエマンサス・ノルティエリは高温と蒸し暑さに弱いので、休眠期である春から夏は風通しの良い涼しい場所で管理します。
通風があまり確保できない場合でも、扇風機などで風を送ると暑さによるダメージを減らすことができます。
【水やり】
成長期の秋と春は用土が乾燥してから水やりします。
成株への頻繁な水やりは徒長や球根の腐りを誘発しますので、締まった株に育てるには辛めに水やりしましょう。
ハエマンサス・ノルティエリは涼しい季節に成長する冬型種ですが、寒さが厳しくなる厳冬期は水やりの量・回数を少なめにします。
蒸し暑くなり始めた頃から徐々に水やりを控え、葉が枯れて涼しくなるまでは断水して管理します。
休眠中は基本的に断水しますが、月に1、2回ごく少量の水やりをすると球根の枯死が防げます。
その際は風のある涼しい夕方以降に用土を軽く湿らす程度に水やりしましょう。
ただし高温期の水やりは球根の腐りを誘発しやすいため、慎重に行ってください。
【肥料】
成長期の秋に薄めた液肥を与えます。
用土によく醗酵した有機質肥料や、緩効性の化成肥料をごく少量混ぜ込んでおいても良いと思います。
【適温】
ハエマンサス・ノルティエリは涼しい季節に成長する植物のため、寒さには強いほうです。
ただし、夜間の最低気温が5度を切らないように管理した方が安全に越冬できます。
寒さよりも夏の蒸し暑さに気をつけ、暑い季節は涼しい場所で管理しましょう。