Calibanus hookeri
カリバナス・フーケリー
ワイルドな魅力溢れる強健種、カリバナス・フーケリー
メキシコ - タマウリパス州からイダルゴ州にかけてが原産です。
標高800-2,700mの範囲の乾燥した山岳地帯の山裾や、石灰岩土壌の草原地帯に自生しています。
属名の 'Calibanus' は、シェイクスピアの戯曲“テンペスト”に登場する怪物、“キャリバン”(Caliban)に由来しています。
種小名の 'hookeri' は、英国が誇るキュー王立植物園の園長も務めた植物学者、ウィリアム・ジャクソン・フッカー博士(Dr. William Jackson Hooker)の名をとって命名されました。
ドーム状から球形の幹を持ったリュウゼツラン科(スズラン亜科:Nolinoideaeとされる場合もあり)の植物で、その異形の株姿から万人に人気のあるコーデックスプランツです。
成熟した株は幹の直径が60cmから最大で1mほどの大きさにまで成長します。
文献によっては1.5-2mまで達するとしているものもありますが、これは同じリュウゼツラン科の 'Beaucarnea'(ボーカルネア)属を指しているのではないかという記述もあります 。
株が小さいうちは幹は地中にほぼ埋もれていますが、成長するに伴い地表にせり上がるように露出してきます。
幹は硬いコルクのような表皮で覆われおり、亀甲模様のような深い亀裂がいくつも走っています。
この亀裂は年月を経るほど深くなり、大株は古木感溢れる迫力ある姿へと育っていきます。
幹の上部からは青白色の細長い葉を上に向かって無数に伸ばします。
60-90cmほどの長さにまで伸びる葉は、伸びきるとアーチを描くように垂れてきます。
葉の表面は粗く、フチが僅かにギザギザとした鋸歯状になっています。
葉はある程度の数がまとまった束で生えており、株が成長するに従って成長点が増えるように葉束の数は増えていきます。
亀裂だらけの異様なコルク質の幹から細く美しい葉が風にたなびく様子は、植物好きでなくとも惹かれる魅力があります。
大株にならないと開花しませんが、葉の長さと同程度の花茎を伸ばし、薄いクリーム色をした円錐花序の小さな花を密集しながら咲かせます。
なおカリバナス・フーケリーは基本的に雌雄異株のため、雄株・雌株がないと結実しません。
成長は非常に遅く、直径20cmほどの大きさに成長するのに40-50年、直径30cm程度の株で100年以上の年月が必要と言われています。
実生で育てた場合、株が小さいうちは極端に成長が遅い感じはありませんが、幹が4-5cmぐらいに達すると急に成長スピードが緩慢になります。
なお、近年までカリバナス属は属中一種のみの植物とされていましたが、1995年にグアナフアト州にて幅広の葉と大きな花を持つ 'Calibanus glassianus'(カリバナス・グラッシアヌス) が発見されました。
性質は極めて強健で、焼けつくような真夏の直射日光や、凍てつく冬の寒さもモノともしません。
また、しっかり活着した株であれば長期の断水や、梅雨時期や秋の長雨にも耐え抜くことができます。
そのため年間を通した屋外露天栽培や、豪雪地帯をのぞいては地植え栽培も可能です。
私見ですが、本種はあらゆる多肉植物の中でも最強に近い性質の強さを兼ね備えたタフガイだと思います。
その成長速度の遅さから、大株は野生株を採取するしか入手手段がありませんでしたが、近年は乱獲や自生地の環境破壊の影響でかなり数を減らしているようです。
株の寿命も非常に長く、よほど無茶な育て方をしない限りめったに枯れることはないため、孫の世代まで引き継ぐつもりで末長く育ててあげてください。
【科・属】
Agavaceae Calibanus
リュウゼツラン科カリバナス属
【原産地】
メキシコ - タマウリパス州からイダルゴ州にかけて
【置き場所】
年間を通して直射日光のよくあたる屋外で管理します。
カリバナス・フーケリーを健康に育てるには直射日光がよく当たり、通風のある屋外が適しています。
日当たりの悪い室内で長期間管理すると葉が徒長したり、株の元気がなくなり、根腐れや害虫の発生を誘発します。
人間の目では明るく見える屋内でも、紫外線や植物にとって有益な光線が著しく不足している場合があります。
できる限り長時間日光の当たる屋外で育てるようにしましょう。
豪雪地を除いては地植えも可能です。
カリバナス・フーケリーは耐寒性が非常に強いため、多少の積雪程度ならものともしませんが、地植えする場合は日当たり・水はけの良い場所に植えましょう。
水分のたまりやすい湿気の多い場所や、水はけの悪い粘土質の土壌に植えると根腐れを誘発する可能性があります。
【水やり】
成長期の夏は用土が乾いてからたっぷり水やりします。
カリバナス・フーケリーは長期の干ばつにも耐えるため、露天で栽培している場合は水やりは雨水に頼っても問題ありません。
また日当たり・通風の良い露天栽培の場合は、梅雨時の長雨でも調子を崩すことはありません。
温室内や風通しの悪い場所で栽培する場合は、用土が常に湿った状態にならないようメリハリをつけて水やりしましょう。
地植えした場合は基本的に水やりは不要です。
ただし、小さな株の場合は適度に水やりした方が調子が良い場合があります。
【肥料】
カリバナス・フーケリーはあまり多くの肥料は必要としません。
成長期に薄めた液肥を少量与えます。
用土によく醗酵した有機質肥料や、緩効性の化成肥料を少量混ぜ込んでおいても良いと思います。
【適温】
カリバナス・フーケリーは非常に耐寒性が高く、よく根の張った充実した株の場合はマイナス10度程度までの寒さに耐えることができると言われています。
ただしこれは一時的に極端な寒さに耐えることができるという意味なので、日中はふんだんに日光に当てて株自体の温度を上げ、体力が回復するようにしてあげましょう。
また、寒さに当てる場合はなるべく用土は乾燥した状態を維持しましょう。
小さな株や、根が張っていない株は寒さに弱い場合があるため、暖かい場所で管理した方が安全に越冬できます。